働きたくない ≒

 将来を考えなければならない。周りの友人や先輩は口を開けば就活のことばかりだ。私は「働きたくないんですよねー(笑)。」と誤魔化し続けている。メンヘラキャラは楽だ。

 このまま東京で生きていていいのだろうか。帰省するたびに罪悪感に襲われる。両親や祖父母、親戚は着実に年を取っている。腰を痛めたり、入院したり、認知症が進んだりしている。そう言えば、ネコも片目が見えなくなった。私だけ東京で遊んでいる。

 このまま東京で生きていていいのだろうか。私の彼氏はとても温かい人だ。そして、根っからのシティボーイだ。去年、彼はコートを3着ほど着まわしていた。今週会ったら、新しいコートに身を包み、新しいマフラーをしていた。ちらりとタグを覗くと、それぞれポールスミスラルフ・ローレンのロゴが見えた。「新しいの? おしゃれね」と言ったら、「そうなの。衣替え中。」と微笑んだ。きっと彼のお部屋にはブランド物の袋が並んでいるのだろう。

 私はコートを2着持っている。どちらも母のお下がりで、着るようになってもう3年が経つ。防寒性に優れていてポケットもあって気に入っている。マフラーは受験でうつ状態になっていた私に叔母と母がWEGOで買ってくれたものだ。ラルフ・ローレンのマフラーと比較すると、色が落ちてペラペラだった。

 首都圏に実家があって、両親が誰もが知る大企業に勤めているような人との間には大きな壁がある。「文章を書く仕事がしたい。」「出版物に携わりたい。」「言葉で誰かを救いたい。」そんな思いよりも「このまま東京で生きていていいのだろうか。」という気持ちの方が強い。

 

 だけど、私は地元に帰ったら確実に病んでしまう。限られた選択肢、狭いコミュニティ、思い出したくない過去。

 

 あれ、私はなんで今ここにいるんだろう。私は何のために生きているんだろう。

 

 私にとって「働きたくない」は「生きたくない」と同義だ。皆どうして生きようとしているんだろう。